ゴミのなかにあるキラキラしたなにか【1日1品】
ディストピア思想。
なんでかはわかりませんが、人類は文明を築いてからずっと、「もうすぐ滅んでしまうのでは恐怖」にかられているようです。
で、今回、トランプさんが当選したら、このディストピア思想に拍車がかかって、一部の人たちは「これで世界は滅ぶ」みたいなことを言っております。
それはばかばかしいのでどうでもいいんです(昨日も書いたけれど、そんなこと言っている暇があるなら投票ぐらいすればよかったのに!)
ただ、このディストピア思想というやつは、どうやら我々の「美意識」が関係しているようです。
われわれは、なぜだか、壊れゆくものに美しさを感じます。
私も、建物を解体している現場や、いい感じの廃墟にかなり惹かれます。
今まで見たいちばん美しい風景は、父が死んだ時に、病室の窓から見えた夕焼けです。
「絶望って、いつもの景色をまぶしく見せるのね」という名言が、「ブラックジャックによろしく」という漫画にでてきますが、本当にその通りだなと思います。
本日は Patricia Perez Eustaquio(パトリシア・ペレ・エスタキオ)。
フィリピンで生まれ、マニラを中心に活動する女性アーティストです。
作品は、シルクのレースや布など、ファッションに使われるような身近な素材をつかった彫刻と、とっても儚いドローイングが有名です。
本日の一品はこちらの「BLACK DUST VI」
自分のアトリエの脇に、捨てられていた花や、乾燥した絵の具のかけらを見て、美しいなと思って描いたそうです。
この感じが美しいって、すごくストレートだけどわかる。
美術は、見えないものや、見えにくいものを、見えるようにするための方法です。
誰にも見向きもされないゴミや、反吐のなかに隠れているキラキラ輝くものを、取り出して見えるようにするのは、美術の重要な役割です。
そういえば、私の父も、壊れた車や、枯れかけの花ばかり描いていました。