くま美術史

くま美術店の公式ブログです。するりとわかる美術史や、笑える美術の展覧会情報などをお届けしていきます。公式販売サイト「くま美術店」http://kuma-bijutsu.jp/

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

紐をあむという特別な行い【1日1品】

「もののけ姫」を超えました。 映画「君の名は。」が、興行収入で歴代の邦画第3位になりました。 今回ぬかされた「もののけ姫」は、高校時代に友だちと毎朝セリフを朗読していたので、大変に思い出深く、残念な気もしています。 ひとつの時代が終わったんで…

パワーレスな美術品たち【1日1品】

無力やわ〜。 無力かつ、無気力やわ〜。 ……そんな始まり方ですみません。 大丈夫です。 精神的にも、肉体的にもふつうです。 ただ、本日のアーティストさんが「無力でかつ無気力なモノ」をテーマに作品を作られているので、存分に無力感を味わっていただけで…

ガラガラ美術館【1日1品】

昨日、またしても静岡県へ行ってきました。 前職の同僚たちといっしょに「クレマチスの丘」に。 1か月まえに行ったばかりだったんですけどね。 前回の様子はこちら kuma-bijutsu.hatenadiary.jp これが、かなりよかったので「みんなで遠足行こう!!」と誘っ…

昨日は書きすぎたから、今日は短めです【1日1品】

本格的に冬ですね。 ちょっと寒さが和らいだとはいえ、天気も悪く、やっぱり寒く、気分も滅入りがち。 どうですか? 気分。 滅入りがちではないですか? 冬ですから、多少はね。 ということで、本日はハッピーな作品をお届けしますよ。 アーティストは Richa…

悪魔とのギャンブルを楽しむジジイ【1日1品】

本日は「東京都庭園美術館」に行ってまいりました。 庭園美術館というぐらいなので、敷地のほとんどは庭です。 この建物、もともとは 朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)という皇族の方のお屋敷で、その後、吉田茂によって外務大臣公邸になったり、…

数学的おばあちゃんアーティスト【1日1品】

本日もおばあちゃんアーティスト。 Dora Maurer(ドーラ・マウラー)は、1937年にハンガリーのブタペストで生まれました。 御歳79です。 ハンガリーの現代美術業界では、最重要人物のひとりにあげられ、世界的な評価もすごく高いです。 本日の1品は「Seven T…

夢と希望のある話【1日1品】

「芸術家」と聞いて最初にイメージするのはどんな人ですか? おそらく、ヒゲが生えた男性で、貧乏。 好物はトウモロコシとキュウリで、何色だかわからない色のシャツを着ている。 常に遠くを見ていて、気難しく、そして、貧乏。 なんとなくこんなイメージで…

パリピなリア充が描く、あたたかい絵【1日1品】

寒いー!! 寒い! 寒い! 寒い! 冬ですか? (冬ですね) 本当に雪が降りそうです。 5年ぐらいい前に中国に住んでいたんですが、その時に、ある中国人にこんなことを言われました。 「荒木さん、寒そうね。赤い服を着な」 中国人は、寒い時は、赤い服を着…

オール・オーバー・カバー【1日1品】

明日の夜は関東でも雪が降る、かもしれません。 テンション上がりますね。 子どもの頃から雪が大好きです。 雪の日はの朝にカーテンを開けると、見慣れている風景が、昨日までとは大きく変わっていて、宇宙旅行に来たような空想をしていました。 ここは、宇…

雨が降ってポルケを思い出しています【1日1品】

ジグマー・ポルケを思い出しています。 22歳のころに、はじめてウィーンに行きました。 特になにかを期待していたわけではなく、ドイツで「ドクメンタ12」を見て、ローマに行く途中で気が向いたからよってみたという程度の気持ちでした。 結果、その旅行の中…

プロの画家ってうまいのね【1日1品】

顔が小さく、手が大きい。 Njideka Akunyili Crosby(ジデカ・アクーニーリ・クロスビー)は、1983年にナイジェリアで生まれました。 今はロサンゼルスを拠点に活動をしています。 作品の特徴は大きくわけて3つ。 まずは「家」の様子を描くこと。 この「家」…

小学生が描く、すさまじい電車の話【1日1品】

建築の話をしてきました。 三軒茶屋に「るくぜん」という整体鍼灸院があります。 luxen.jp ここの難波さんが、月に1、2回。多いときはもうちょっとのペースで、いろいろなワークショップをしています。 この夜は「よるくぜん」という企画の第一回目。 「建築…

古いけれど、古臭くはない【1日1品】

どっかで見たことあるかも。 Thomas Houseago(トーマス・ハウシーゴ)の彫刻は、新しいんだけど、どっかで見たことあるかもって思うような彫刻をつくっています。 1972年にイギリスで生まれたハウシーゴさんは、オランダに渡り、ベルギーに渡り、今はアメリ…

これが……テクノロジーなのか……【1日1品】

ついに来たか。 テクノロジーをアートの道具として使うことは、かなり前から行われていました。 でもそれは、コンピューターグラフィックスを使って絵を描くことだったり、3Dプリンターで彫刻を作ることだったり、映像を加工して動画をつくることだけ。 つま…

考えるための鍋たち【1日1品】

本日はサウジアラビアの女性アーティスト、Maha Malluh(マハ・マルー)さんをお届けいたします。 その前に、私事ですが、いや、ブログなんだからほとんど私事なんですが、風邪をひきました。 久しぶりの風邪で、とまどっています。 といっても、熱があるわ…

あなたは、旅が好きですか?【1日1品】

私は、旅が嫌いです。 いや、そんなに嫌いなわけではないんですが、世の中には「生きることは旅することだ」とか、「旅するように生きたい」とかいう人が大勢います。 実際、目的もないのにアジアの小さな村に行っては、子どもと写真を撮ってフェイスブック…

タオルを信仰したいという気持ちがあります【1日1品】

ライナス症候群なんです。 私が。 小さい頃は、どこにでもタオルを持って歩いておりました。 お気に入りのタオルがないと、どうも気持ちが落ち着かず、泣き叫んでいたと思います。 今はそんなことありませんが、枕の代わりにタオルケットを丸めて頭の下にし…

紙媒体か、Webかとか、そんな小さいことはどうでもいいのです【1日1品】

本好き。 本というメディアに、特別な愛を寄せる方々が多数います。 紙の本に、原理主義的な、特別な意味を見出すような変な人種がそこかしこにいるのです。 そんで、日本だとあまり馴染みがないですが、海外では「アーティスト・ブック」と言われるものがあ…

現代美術あるある、なにが描いてあるのかよくわからない問題【1日1品】

ストレートに見えて、ギュンギュンに曲がるスライダー。 中国人の現代アーティストが国際的なアートの舞台に出てきたのはここ15年ぐらいのことかなぁと思います。 それまでにもポツポツはいましたが、今のようにどこのギャラリーでも中国人アーティストを大…

恐怖は、さわやかな風が吹く青空のもとで【1日1品】

空芯菜ってアサガオみたいな花を咲かせるんですね。 ぜんぜん知りませんでした。 1970年からはじまったカンボジア内戦時に、食糧危機におちいった人々は、一年中収穫ができる「ヨウサイ(空芯菜)」を主食で食べていたそうです。 クメール・ルージュが支配す…

ゴミのなかにあるキラキラしたなにか【1日1品】

ディストピア思想。 なんでかはわかりませんが、人類は文明を築いてからずっと、「もうすぐ滅んでしまうのでは恐怖」にかられているようです。 で、今回、トランプさんが当選したら、このディストピア思想に拍車がかかって、一部の人たちは「これで世界は滅…

アメリカって……【1日1品】

アメリカって……。 なんなんだろう。 今日、アメリカの大統領選挙があり、ドナルド・トランプさんが当選しました。 うん。 まぁ、あれやな。 これ自体は、どっちでもよくて、トランプさんに頑張ってもらうしかないということです。 彼の政治家としての力は、…

現代の春画を描くアメリカ人がつくるミニチュアキッチンセット【1日1品】

キャッ!! 「春画」というジャンルがあります。 江戸時代のエロ本ですね。 まったく関係ないですが、エロ本を「えろほん」と読むか「えろぼん」と読むかで大論争になったことがあります。 春画は、ここ最近大人気。 伝統的なジャポニズムを感じさせながらも…

私たちは情報そのものである【1日1品】

ビッグデータ型アーティスト。 本日は R. Luke DuBois(R・ルーク・デュボイ)さん。 1975年生まれの、のっぺりした顔を持つアーティストです。 初期はコンピューターで音楽をつくる最先端系ミュージックを大学で学び、卒業後は講師として教えていました。 …

ポンポンの白熊の話をしたい【1日1品】

友達としゃべっていたら、フランソワ・ポンポンの話になりました。 薄暗いカフェの中で、 「ポンポンは最高」 「パリの美術館に何万点とある作品の中でも、オルセーの「白熊」が1番いい」 「ポンポンがいてくれたから今がある」 「すべての善良なものを集め…

音から見えるリアルな風景【1日1品】

サウンド・インスタレーションという美術のジャンルがあります。 音楽、といえば音楽なんだけど、ちょっと違うのかな。 私的には、映画と映像作品の違いぐらいの感じ。 まぁ、ジャンルなんてものはどうでもよくて。 美術は「これこそ美術!」みたいなルール…

ゆるめなイスラムが表現する圧倒的な世界【1日1品】

偶像崇拝が禁止されたら、なにを拝めばいいのでしょう。 Idris Khan(イドリス・カーン)はイスラム教徒のアーティストです。 生まれはイギリスですが、両親がパキスタン人で敬虔なイスラム教徒のため、彼も自動的にイスラム教徒となりました。 とはいえ、彼…

忘れちゃうことの悲しさと救い【1日1品】

記憶って儚い。 起こったことは一定の時間が経つと忘れられます。 そういった、記憶が消えるってことの、寂しさだったり、反対に救い。 忘れてはいけない。 でも、忘れないと生きていくのが辛い。 そういった「記憶の作用」そのものを表現しているアーティス…

現代美術のマインドセット。算数ドリルからの脱却【1日1品】

顔はこわいが、思考はかわいい。 現代美術のわかりにくさのひとつに、作品がシンプルすぎることがあります。 線を引いただけとか、何かを持ってきておいただけとか。 反面、日本の義務教育では、成果よりも費やした時間が評価の対象となっており、コンパクト…

個性がなくても美術はできるのか【1日1品】

この禿げたおじさん。 名前は Jim Hodges(ジム・ホッジズ)。 アーティストです。 1957年にアメリカで生まれ、以降ニューヨークを拠点に活動してきました。 い、以上。 彼については、生まれも育ちも一般的ですし、アーティストだということをのぞけばそこ…