恐怖は、さわやかな風が吹く青空のもとで【1日1品】
ぜんぜん知りませんでした。
1970年からはじまったカンボジア内戦時に、食糧危機におちいった人々は、一年中収穫ができる「ヨウサイ(空芯菜)」を主食で食べていたそうです。
クメール・ルージュが支配するカンボジアの下で人々はアサガオに似た花を見つけて、茎をとって、空腹をしのいました。
その後の23年間で、70万〜300万人といわれる人々が虐殺されます。
そんな内戦がはじまった翌年に Sopheap Pich(ソフィープ・ピッチ)は生まれます。
彼は、カンボジアのアーティストとしては、間違いなくトップの国際的な評価を得ています。
作品は、籐のツルや、竹など、カンボジアによく生えているものと、ワイヤーや樹脂を組み合わせて、巨大な彫刻が特に有名です。
本日の1品は「Morning Glory」(ヨウサイ)
この作品には、内戦と虐殺の経験というすさまじいものが込められています。
でも、軽やかに落ち着いています。
これがすごい。
赤い色で画面を塗れば、「死」を表現できるわけではありません。
むしろ、この静かさが、かえってリアルな当時の雰囲気を伝えています。
本当の恐怖は、爽やかな風が吹く、青空のもとで起こっているのです。