おじいちゃんの本性【1日1品】
人類滅亡。
恵比寿にある「東京都写真美術館」にて開催中の「杉本博司 ロスト・ヒューマン」というショーに行ってきました。
杉本さんは、1948年に東京に生まれ、立教大学を卒業後にロサンゼルスの美術大学で写真を学び、ニューヨークを拠点に活動をしていきます。
ニューヨークでは、写真家として独立した直後に「MoMA」に作品が収蔵されるなど早くから頭角を現していきます。
私の、杉本博司のイメージは、とにかく哲学的でオシャレ!
「ニューヨーク自然史博物館」に展示された博物館のジオラマを、本物の風景のように撮ったジオラマシリーズ。
劇場で映画を上映し、ひとつの映画が終わるまでずっとカメラを露光し続けて撮られた劇場シリーズ。
「無限の倍」に焦点を合わせて撮影した海景シリーズなど。
虚実おりまぜた世界を、カメラという特殊な機材でなければ見ることのできない方法で、作品にしておられます。
テーマごとに撮影機材や撮影方法が入念につめられ、その高い技術は数多くの写真家の中で抜きん出ていると言われています。
こんな写真が、大きくプリントされ、美術館に静かに置かれている。
もうね、めちゃくちゃかっこいいんですよ。
ウィスキーが似合う大人な雰囲気。
葉巻をくゆらせながら見るべき作品ナンバーワンですわ。
いつか杉本師匠のようなステキじいさんになりたい!
そう思って学生時代を過ごしておりました。
そして今回、ひさしぶりの日本での大きな展示。
かなり気合を入れられたということで、どんなステキオシャレ空間が広がっているのか。
私もそろそろウィスキーを飲むべき年になってきたんじゃないのかなんて考えながら見に行きました。
結果……
驚愕です。
驚愕……
入り口こそ海景シリーズでいつものようにはじまったのですが、その後に続いたのは「杉本さんの考える人類滅亡のストーリー」。
美術館の中は、架空の博物館のようになっており、多種多様な理由で滅亡していく人類の遺産が展示されているのです。
すごーく、すごく悪言い方をすれば、とんでもない中2病。
中学生男子が、誰でも考える、ダークなストーリーを最高のクオリティで表現したような展示でした。
なのに、なんかすごいんですわ。
実際は中学生どころではなく、すいもあまいも経験しつくしたじいさんがつくったものです。
でも、どう見ても68になるじいさんが考えたとは思えないほどの熱量。
展示を見ていると、「俺の言いたいことはこうだ!!」と、脇差しで刺されているような感覚がしました。
杉本さんの、本当に表現したいことってこういうのだったのね。
オシャレでセンスフルなキラキラした大人の展示なんて、本当はどうでもよかったのね。
逆にすげえわ。
その年で、ここまでさらけ出したことできるなんて。
あなたのようになりたいという思いが、いっそう強くなりました。
写真撮れなかったので中の様子は実際に見てお確かめを。
それはそうと、「東京都写真美術館」の略称が「TOP Museum」になったことは、クソダサいと思います。
関係者の方、早急に封印していいのではないでしょうか。