アパルトヘイト【1日1品】
アナログの境地。
引き続き「Power100」にランクインしたアーティストについてです。
昨日は、デジタル世代の申し子のようなアーティストでしたが、今日はまったく正反対のアーティストを。
彼の名は William Kentridge(ウィリアム・ケントリッジ)
ランキングでは62位に入っています。
1955年に生まれた御年61歳の大御所アーティストです。
両親は弁護士。
アパルトヘイトで弱い立場に立たされた人々の代理人をしていました。
そのため彼の作品は南アフリカの歴史や、アパルトヘイトへの批判などがテーマとなっています。
ヨハネスブルグの大学で政治学とアフリカ研究の学士号を取得し、その後、美術の学士号も取得しています。
そのあと、パリに渡り、パントマイムと演劇も学んだようです。
というか、どうやらウィリアムさんは俳優になりたかったようなんです。
ただ、そっちの才能はなかったようで、アーティストとして平穏に(ここ笑うところ)生きることにしたようです。
これが、まぁ、彼のざっとした経歴なのですが、ともかく作品を。
タイトルは「Felix in Exile」(亡命のフェリックス)です。
彼の作品は、こんな風に手描きのアニメーションが中心です。
すべてのアニメーションは、木炭という木の枝を炭にしたものをつかって描かれています。
描いては消し、描いては消して、物語がすすんでいきます。
いやぁ、重い。
すさまじく重いですよね。
ただ、たぶん、アパルトヘイトって、こうだったんだと思います。
これを描きつづけるって、肉体的にも、精神的にも、すさまじいな。
彼自身は、重々しい人ではないです。
むしろ、幼いころから絵が好きで、青年時代は俳優を目指すような、どちらかといえば明るめなタイプなんじゃないかと思います。
それでも、これを描かなければいられない。
アパルトヘイトの凄まじさって……
美術は、見えないものや、見えにくいものを、見えるようにするための方法です。
だから、キラキラ美しいものだけではありません。
見たくないものも、見なければいけない。
むしろ、そういうものこそ、きちんと見えるようにすべきなのかもしれません。