くま美術史

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雨が降ってポルケを思い出しています【1日1品】

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ジグマー・ポルケを思い出しています。


22歳のころに、はじめてウィーンに行きました。

特になにかを期待していたわけではなく、ドイツで「ドクメンタ12」を見て、ローマに行く途中で気が向いたからよってみたという程度の気持ちでした。

結果、その旅行の中でも、今までに行ったヨーロッパの町の中でも、ウィーンはダントツで1番好きな町になりました。


はじめて見たクリムトの「接吻」と「ベートーベン・フリーズ」。

それまでは、クリムトのことを特別に好きだと思ったことはなかったのですが、圧倒的でした。

未だに、あの絵を前にした時の、つきぬけるような鳥肌と、鼓動がだんだんと強くなっていく感覚が鮮明に思い出せます。

よく晴れた、10月の肌寒い日でした。


クリムトと動物園を見た翌日、ウィーン・ルートヴィヒ財団近代美術館(mumok)へ行きました。

そこで、Sigmar Polke(ジグマー・ポルケ)に出会います。

教科書の片隅で見ていたけれど、ほとんど気に留めていなかった画家。

本物の絵を見ると、瞬間にファンになりました。


本日の1品は「Menschenbrücke (detail)」

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黄色い透明な布に、変なポーズのおっさんと子どもが転写され、淡い絵の具がダラ〜と広がっている作品です。


ポルケは東ドイツに生まれ、西ドイツに移住。

戦後の混乱期を経て、ドイツの現代絵画を代表するアーティストになりました。

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作品は、化学薬品などを多用する「魔術的で破壊的」な方法で描かれています。

スケスケの布に、写真や、自分で書いた絵が転写されています。

可愛くて、やさしくて、毒々しい。

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漫画家の冨樫義博さんの世界観に似ているかも。


なんか、今日はポルケを思い出す1日でした。