現代美術のマインドセット。算数ドリルからの脱却【1日1品】
顔はこわいが、思考はかわいい。
現代美術のわかりにくさのひとつに、作品がシンプルすぎることがあります。
線を引いただけとか、何かを持ってきておいただけとか。
反面、日本の義務教育では、成果よりも費やした時間が評価の対象となっており、コンパクトに成果だけを出すと怒られたりしてしまいます。
漢字の書き取りとか、計算ドリルとかがまさにそれ。
「どんな漢字も、一律にノートのマス目を下まで埋める」
「理解度よりも、ドリルを最後までといたかどうかが大事」
だから、なんとなく、大人になった今でも、費やした時間が短いものはダメなんじゃないかって不安感がおそってくる。
その思考で、現代アートを見てしまうと、背徳感に襲われます。
「あれ〜。こんなに、楽して、評価されているなんて、なんだかよくないんじゃないかしら」
まず、その思考を脱ぎ捨てて、ラクになりましょう。
さらに、洗練されたアイデアをひねり出すのは、ただただ時間をかけて何かをするよりも、ずっと苦労の多いことだと知りましょう。
現代美術を楽しむには、このふたつのマインドセットが必要です。
あと、これからの日本の社会状況や、働き方を考えると、そろそろ長時間至上主義はやめといた方がいいかなとも思います。
余計なお世話ですが、余計なお世話はアートの本質ですから失敬。
なんでこんなことを書いているかというと、本日のアーティストさんは、超絶アイデアマン。
名前は Roman Ondak(ローマン・オンダック)
1966年にスロバキアで生まれたアーティストです。
彼の作品はとにかくシンプルでかわいい。
シンプルかわいいは、究極のアートのかたちです。
武道も、数学も、美術も、上へ登れば登るほどシンプルになっていき、おいしいお肉が甘いように、美しいアートはかわいい。
これは真理です。
ですから、この作品も最高です!!
本日の1品は「Measuring the Universe」(世界をはかる)
美術館を訪れた人は、壁にぴったり近づいて、頭のてっぺんに「しるし」として自分の名前を書きます。
何百人分かの名前が集まると、こんなふうに。
あと、この作品も好き。
「Lucky Day」
泉に、コインを大量に入れてみた。
あとこれ「Only Good News」
いいニュースだけをあつめて、薬棚につめこんだ作品。
かわいい。
かわいいではないか!
時間をかけることは悪いことではないですが、目的ではありません。
美術の目的は、見えないものや、見えにくいものを、見えるようにすること。
シンプルなかたちでそれが実現できれば、それはそれで偉大なのです。