くま美術史

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「間」って結局なんなのさ【1日1品】

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紐です。

紐が、天井から床まで伸びて、床を這って、また、天井まで上っています。

 

フレッド・サンドバックの作品。

このシリーズはすべて「untitled」というタイトルがつけられています。直訳すると無題ですね。


最初にこのフレッド・サンドバックさんの作品を見たのは、ドイツのフランクフルト現代美術館でした。

もう、衝撃。

「くるところまで、きてしまった」と、思いました。


だって、広い美術館の一室に、紐がニョイーンって伸びているだけなんですよ。


でも、これは、すごく正当な彫刻作品なんです。

彫ってもいないし、刻んでもいないけど、彫刻を突き詰めていくと、これなんです。


日本人はよく、「間」という言葉を使います。

「間がいい」とか、「間をとる」みたいな。

確かに、「間」は大事だと思います。

彫刻とは、「間」の芸術です! (芸術家っぽいこと言った!)

「じゃあ、その「間」ってなんなの? 見せて」って言われたときの、ひとつのわかりやすい答えがこれです。


広い空間に、紐をピンと張って、別の空間をつくる。

そうすると、今までなんとなく繋がっていた「間」が、区切られて、別の姿を表す。

これが、間。

言われてみると簡単なことなんですが、これをこういう形でつくったなんて、とんでもないアイデアです。


どちらかというと、科学とか、数学の世界に近い発想の仕方。

ピタゴラスの定理みたいな。

教われば小学生でも理解はできるし、計算もできます。

しかし、これをゼロから自力で見つけられるとなると、歴史に名を残す天才レベル。


うーん。

すごいよフレッド。