くま美術史

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石川直樹展「この星の光の地図を写す」

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今日は、茨城県の「水戸芸術館」まで行ってきました。気心知れたる仲間たちと、レンタカーでブイーッンと。途中、高速道路で後ろの人たちがシートベルトしていなくて捕まって1点減点されました。

 

今回、見てきたのは、写真家の石川直樹さん個展「この星の光の地図を写す」

 

もう一回、言いますね。

 

「この星の 光の地図を 写す」

 

そんな素敵な(絶句)。ちょっと、そんなこと言わないで欲しい。なんて美しさとロマンチックさ。世界が輝いて見えてきてしまう。

 

会場はこんな感じです。

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すごくよくて、何がよかったのかなって考えてみると。いろいろいいところはあるんだけど、なによりも、会場の最後に福島でおこなったプロジェクト「TIMELINE」がとにかくものすごくよかった。

 

福島の中学生といっしょに、インスタントカメラで日常を撮っていった写真が、壁一面にベターっと貼られている。

 

そこは写真撮影禁止区域だったので画像はないんですが、なんだろうあれ。石川さんの写真は、神々しくなく、スッとそこにあるものを持ってきましたよ〜って言う雰囲気が魅力で。エベレストでも、K2でも、海でも、島でも、ジャングルでも、私の日常からはかけ離れた世界を撮っているのに、距離感がずーっと一定で見える不思議さのある写真。それが石川直樹の作品だと思っているんですね。

 

その、最終進化系というか、そのかたちがこの福島の写真たちからは見えたんです。距離感が近いどころか、自分の内側から出てきたんじゃないのかっていうほどの写真。写真を見ているんじゃなくて、自分の記憶とか、昨日見た夢とかを見ているような感覚。

 

もちろんね、もちろん。この福島のプロジェクトは「アートの文脈」からは外れている作品だと思うんです。やっていることもコンセプトも作品のクオリティも、西洋のアート文脈の中では稚拙って言われるようなもの。

 

でも、それが凄まじくよかった。

 

なんだろうなぁ。あのよさって。光が、体を透過して、風のように吹き抜けていく感覚。セックス的な気持ちよさの真逆にある、別の気持ちよさ。盛り上がりのない、一定の気持ちよさが、石川さんの写真を見ていると味わえるんです。

 

あの感覚は、くせになるな。

 

あと、その福島の作品の横に添えられていた言葉がとってもよかったんですが、写真撮れなかったので細部が思い出せず。メモればよかったと後悔。

 

いい1日でした。

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