くま美術史

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パリのクリスマスツリー【1日1品】

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この人はある意味サンタです。

 

もうすぐクリスマスですね。

クリスマスといえば、ツリーですね。


あれは、2年前のことでした。

フランスのヴァンドーム広場に、Paul McCarthy(ポール・マッカーシー)さんの巨大な彫刻が設置されます。

その名も「Tree」

まさにクリスマスシーズンにぴったりな名前ですね!


有名な彫刻家の作品をひと目見ようと、パリっ子たちはおしゃれな出で立ちで、パートナーと仲睦まじく出かけていきます。

「あ、あれじゃない? 」

「どこどこ? 」

「ほら、あの遠くに見える緑の」

「あ、ほんとだ! 」

「あ、ちょっと待ってよ〜、ヒールだから走れないの」

ふたりは、幸せそうにマドレーヌ寺院の脇を通りすぎ、広場まで来ました。

そして、ほほを紅らめめした。

彼女は言います。

「まぁ……」


その作品は、こちらです。

 

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なんだか、独特なフォルムですよね。

勘のいい方と、感度のいい方は、思い当たるふしのあるかたちだと思います。


そうでない方のためにいちおう書いておくと、あれですよ。

これは女性用の「大人のおもちゃ」に、見えなくもないんです。


巨大な大人のおもちゃのようなものを、パリのど真ん中に出現させたのです。


当然ながら、賛否両論どころか、かなりの方々が怒りはじめます。

「パリにあんなものおくな!」

「クリスマスをなんだと思ってるんだ!!」


日本では「聖夜」を「性夜」と言われたりしているので大変に耳の痛いまっとうなご指摘です。


また、同性愛カップルの結婚に反対しているフランスの極右グループが特に激怒していたそうです。


で、数日後に壊されてしまいました。

バルーンみたいな構造だったので、空気を抜かれてぺしゃんこに。

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でも、たぶん、壊されるところまでふくめて作品です。

クリスマスという形骸化した宗教行事を皮肉り、超保守な人たちの「古い女性観」を白日のもとにさらすこと。

ここまでやって、作品は完成です。


おもろい人やな。

 

この人、最近の作品では、ディズニーに喧嘩を売りつづけています。

 

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