くま美術史

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悪魔とのギャンブルを楽しむジジイ【1日1品】

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本日は「東京都庭園美術館」に行ってまいりました。

 

庭園美術館というぐらいなので、敷地のほとんどは庭です。

この建物、もともとは 朝香宮鳩彦王(あさかのみや やすひこおう)という皇族の方のお屋敷で、その後、吉田茂によって外務大臣公邸になったり、西武鉄道に払い下げられてプリンスホテルの本社として使用されるなど、とにかく立派!!

 

特に気に入ったのは、新館の渡り廊下のゆらゆらしたガラス。

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日が差してできた影がかわいかった。

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庭はこんなの。

www.instagram.com

この庭に小さな小屋を作って住むのはいいねぇと言いながら見ていましたが、たぶん小屋を建てたら怒られるんでしょう。

どうせ!


この美術館に、今回は Christian Boltanski(クリスチャン・ボルタンスキー)さんがやってきております。

ボルタンスキーさんは1944年にフランスで生まれました。

ご両親がユダヤ系だったそうで、ドイツ占領下のフランスでは圧倒的に危機的な状況。

実際に多くの人が死んでいった光景を、直接は見ていないでしょうが、リアルな話として聞き、それが彼の作品のテーマとなっています。

第2次世界大戦や、ホロコーストに限らず、すべての「死」を象徴するような作品を発表し、世界中で圧倒的な支持を得ます。


例えばこの「Monument (Odessa)」は、ユダヤ人の学生の写真のまわりに「ヤールジェットのロウソク」に見立てた照明を当てた作品です。

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ヤールジェットのロウソクとは、ユダヤ教の「お盆の送り火」みたいなものだそうです。(違ったらすみません)


まぁ、とにかくボルタンスキーと言えば、巨匠です。

世界中の美術愛好家で、知らない人はいません。


ですが、正直な感想を言うと、今回の「庭園美術館」の展示はいまひとつ。

悪いわけではないのですが「余裕」がありすぎる感じ。

「儂はボルタンスキーというもので、こういう作品を作っておる。さぁ、存分に見ろ」という雰囲気がありました。

たしかにボルタンスキーと言えばこれだよね!って展示なんですが、実際、彼ももうおじいちゃんで、もうすぐ本当の「死」がやってくる中では、もっとチャレンジをしてほしいという勝手な要望があるわけですよ。

ジジイの余裕を、豪華な建物と庭で見ても、しょうもない!


ですので、本日の作品は、あえて今回展示されていなかった作品を。

 

この作品は、かなり変わった作品です。

作品自体は、4台のビデオカメラで昼夜を問わずボルタンスキー氏のアトリエを撮影し、その映像をオーストラリアのタスマニア島の洞窟に生中継するというもの。

 

2009年に売りに出され、オーストラリアのプロギャンプラー、デービッド・ウォルシュさんが購入しました。

その支払い方法も変わっていて、代金は1度に支払われず、ボルタンスキーさんが生きている間は、定期的に一定金額を払い続けるシステムとなっています。


これ、なんなのかというと「悪魔とのゲーム」なのです。

 

購入したギャンブラーのデービッド・ウォルシュさんは、だいたい8年でボルタンスキーさんが死ぬと思っており、8年間に支払う金額であれば、その後に儲けが出ると読んでいるそうです。

10年生きられると、赤字になるだろうとのこと。

自分の人生で、プロのギャンブラーと賭けをしている作品なのです。

 

詳細はこちら

www.afpbb.com


うーん。

面白い。

これを聞いて不謹慎とか思う人がいたら、そうとうに考えが浅いなと思います。

 

おじいちゃん。ぶっ飛んでるね!

こういうのもっと見たい!

長生きしてね。