くま美術史

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あなたは、旅が好きですか?【1日1品】

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私は、旅が嫌いです。


いや、そんなに嫌いなわけではないんですが、世の中には「生きることは旅することだ」とか、「旅するように生きたい」とかいう人が大勢います。

実際、目的もないのにアジアの小さな村に行っては、子どもと写真を撮ってフェイスブックのトップページにあげている人たちがいます。

現地の人たちと触れ合い、同じ釜の飯を食べ、ポストカードの景色に涙する。

バックパックを担いで、麻でできた太いパンツなんかを履いて、ゲストハウスでマリファナを吸う。

そういうのはちょっと苦手なんです。

私が海外に行くときは、美術館しか行きません。

昼の12時まで寝て、近くのコンビニ的なところで朝ごはんを買って、美術館に行って、帰りにスーパーで適当なインスタントのおかずとパンを買って、食べて寝ます。

美術館は行きたい。

それ以外は最小限でいい。

家が好きなんです。


尹秀珍(Yin Xiuzhen)は、旅というか、生きる上での移り変わりをテーマに作品を作っているアーティストです。

1963年に中国の北京で生まれ、中国の美術大学を卒業し、高校の教師をしながら作品をつくり続け、世界的なアーティストになりました。

彼女の作品は、衣服や、セメント、捨てられた建築材などをつかって作られています。

 

たとえばこれ。

 

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スーツケースの中に、街が作られています。

人間の住んでいる環境が、いかに脆くて弱いもので、常に変わり続けているものであるかを表しているのです。

かわいいな。


本日の1品は「Projects 92」

 

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ミニバンを真っ二つに切り、あいだを布のトンネルでつないだ彫刻作品です。

中はこんな感じ。

 

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尹さんが言うように、生きることは常に変化しつづける環境の中に身を置くことです。

それは旅そのもの。

だったら、わざわざ遠くに行く必要ないじゃんって思っています。