圧倒的ブラックの力強さ【1日1品】
ディティールがわからなくなるほどの黒。
Kerry James Marshall(ケリー・ジェームス・マーシャル)の絵は、とても「平面的」です。
平面的って、変な言葉ですよね。
ペラペラな紙や、布に描いている絵なんだからあたりまえですよね。
でも、絵の中にも、立体感を大事にする描き方と、平面ぽく描くやり方があります。
単純なんですが、光の角度をぜんぶ無視して、色をペターッと塗ると平面っぽくなります。
日本画、漫画、イラスト、エジプトの壁画、などは平面ぽく描かれています。
反対に、ルネサンス〜印象派までの西洋画は、立体を大事に描かれています。
なんとなく想像出来きるでしょうか。
ケリー・ジェームス・マーシャルの絵は、ものすごく平面的で、黒人をモチーフに描く描き方としては、とても新しい方法でした。
シルエットだけが見えてくるほどに黒く描かれた黒人像。
これは衝撃。
ケリー・ジェームス・マーシャルが描こうとしていることは、西洋の中での黒人の歴史と、アメリカの公民権運動、それから現在までの黒人の置かれている状況です。
この背景についてはよく言われている黒人差別の問題なので、あえてふれません。
そのテーマを表現しようと思った時に、ベターっと塗るという、すごくシンプルな絵のつくりかたを選んだことが、彼のすごさです。
背景とのくらべて、圧倒的に強い黒で人物を描きながら、絵の全体はまとまっている。
だから、パッと見た時の印象が、ものすごく強いんです。
また、目と、歯だけが白く浮きあがっており、表情のインパクトがとっても鮮明です。
ようするに、めちゃくちゃ「強い絵」なんです。
漫画の「ワンピース」。
あれの画面構成とかなり似ているなぁと思います。
「ワンピース」も背景を描きこみまくって、人物はシンプルにベタッとまとめています。
結果、人物のキャラクターがより鮮明に浮かび上がってきます。
歌舞伎の化粧の仕方とかも通じるものがあるかも。