くま美術史

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2016年も、ターナー賞は元気です【1日1品】

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今年もターナー賞は盛り上がっています。


イギリスにターナー賞というアートのコンクールがあります。

イギリスでターナーといえば、19世紀を代表する画家「ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー」です。

そのターナーのように、世界的に活躍するイギリス在住のアーティストを発見し、支援しようということで作られた賞です。


ターナーの絵といえばこんなのですね。

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輝くような色彩で、ダイナミックな自然の風景を描写し、今もなおたくさんの人を魅了し続ける画家です。

伝統的に絵が下手と言われるイギリス人の中で、群を抜いた描写力と先進性を持った素晴らしい画家でした。

彼の風景は、光が降り注ぎ、淡い蒸気で空間が満たされ、すべての生命が輝くような印象を受けます。


そんなターナーの名を冠した賞。

イギリスの威信をかけ、世界に送り出すひのき舞台に立たせるだけの価値あるアーティストを選ぶ場です。

授賞式はテレビ中継され、翌日には新聞の一面を飾り、グランプリ受賞者は人生を変えるほどの栄誉を手にします。


過去にターナー賞に出品された作品をいくつか見ていきましょう。


まずはクリス・オフィリですね。

像の糞を混ぜた絵の具でマリア様を描いています。

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続いてダミアン・ハースト

まっぷたつに切られ、ホルマリンに漬けられた牛の親子です。

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最後はターナー賞史上、もっとも物議を醸したトレイシー・エミンの作品。

自分がマジで使っていた汚いベッド 〜ゴミを添えて〜

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まぁ、こんな感じです。


ターナーさん。

あなたの子孫たちは、こんな感じですよ!

天国で、なにを思いますか。


いや、別にイギリス人が悪ふざけでこれらを選んでいるわけではありません。

本気で、今の時代を代表する作品をつくっているイギリス人を探したら、こうなっただけです。

 

すごいのは、ターナー賞に選ばれたアーティストは、本当に世界で大活躍します。

上記の3人の作品、買おうと思ったら数千万円は用意してください。

日本の美術館では、高くて手が出せない価格です。


で、今年のターナー賞がもうすぐ決まります。

今の時点で、最終候補4人に厳選され、これから2か月間「テート・ブリテン」で展示された後、12月にグランプリが決定します。


本日の1品は、今年のターナー賞最終候補者のひとり、Anthea Hamilton(アンセア・ハミルトン)の「Project for Door」です。

日本語に訳すと「ドアのためのプロジェクト」

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いやぁ。

 

それでもこの数年は、わりと見た目は大人しい作品が多かったんですが、久しぶりに全速力の作品が登場しました。


ちなみにこの作品、とっても大きいです。

目の前に立つと、ちょうど肛門が目の前に来るぐらいのスケール感です。


しかも作者のアンセムさんは、女性です。

彼女、めちゃくちゃクレバーで、真面目な女性です。

一切ふざけていません。


そんなクールな女性が、なぜお尻を作ったのか。


彼女は、自分自身の物語を、ポップカルチャーの文脈を使って、現実の世界にそのまま持ってくる方法を探求しています。

鑑賞者は、作品を見るというより、彼女の物語に入り込むような感覚。

彫刻作品というよりは、舞台装置にちかいようなものを作ることが多いです。


これも、自分の「お尻フェチ」をポップカルチャー的に表現して、誰もが自分の世界に入り込めるようにした作品です。


ターナーさん。

あなたの思い描く世界とは違うと思いますが、子どもたちは元気にやっておりますよ!