自由も差別もある。アメリカはややこしい国【1日1品】
アメリカン!!!
まだまだアメリカにはドリームがあるようです。
この地味な青年。
名前は Ryan Trecartin(ライアン・トゥリカーティン)。
1981年にテキサスで生まれたアーティストです。
なんだか知らないけれど、幼いころから「パフォーマンス」が大好き。
エアギターをかき鳴らすような子どもだったようです。
高校時代は、友達とバンドやダンス、演劇、またそれらの舞台衣装をつくるなど、文化系行動派として熱心に活動しました。
卒業後は「最も自由な感じがする」という理由で美術大学に進学。
Lizzie Fitch(リジー・フィッチ)と出会い、ふたりで踊ったり歌ったり、映像を撮ったりして過ごします。
その頃につくられたのが本日の1品。
タイトルは「A Family Finds Entertainment」。
まぁ、ちょっと見てください。
どうですか?
むちゃくちゃでしょ?
むちゃくちゃなんですが、これを大学内で発表したところから、彼の輝かしいキャリアが始まります。
ホイットニー・ビエンナーレ参加最年少アーティスト。
グッゲンハイム美術館に作品が収蔵。
超有名ギャラリーである「サーチギャラリー」と契約。
などなど。
20代のうちにすさまじい活躍をします。
なんでなの? と思うでしょうが、先ほどの映像作品。しっかり見ていただくとすごいんです。
この映像は、スキッピーというゲイの若者の物語として進められます。
ゲイであることが家族にばれ、家を追い出されたスキッピー。
自殺しようと車にひかれますが、最終的には同じ境遇の仲間により救い出される物語です。
作られたのは2004年。
今でこそ、セクシャルマイノリティに対して婚姻できるよう法整備が進むなど、一定の理解が得られていますが、当時は過渡期。
反対も賛成も入りまじり、理解がえられているとは言えない状況でした。
そんな中、この作品が発表されます。
ものすごい衝撃。
そうなると、アメリカという国は「肩書」とか「経験」はいっさい関係ありません。
「すごい!」と思ったら、「すごい!」と言い、それに見合う待遇を用意します。
映像の技術は拙いものなので、日本だったら「まずは基礎の力を身につけてから」と言われそうなところですが、内容がきちんと伝わればアメリカは絶賛してくれるようです。
もちろん、ライアンの表現力がまずありきですが、日本でこの作品を発表していて、きちんと評価してくれる人がどれだけいるだろうかと考えます。
というか、世界中で、この作品をここまで評価できるのは、アメリカ以外にないのではないでしょうか。
一方で、黒人を差別し、ドナルド・トランプに拍手をおくる人々が多くいるのがアメリカ。
うーん。アメリカってややこしい国やな。