テレビとアートの距離感【1日1品】
これはオランダのコメディアンであるシッパーズです。
それはそうと、野性爆弾の川島さんが好きです。
あの人、すごくないですか。
なぜいきなりそんなことをというと、本日の1品はWim T. Schippers(ウィム・T・シッパーズ)の「Pindakaasvloer」だからです。
ああ! だからか! とはならないと思います。
もし、シッパーズと聞いて、オランダのテレビの!となる方がいれば、その人はただのオランダ人です。
シッパーズは、1942年にオランダで生まれました。
若い頃は、ふつうのアーティストで、ダダイズムや、フルクサスに傾倒し、その当時の最先端のアート活動をしていました。
例えば、北海にレモネードを流したり、ギャラリーに割れたガラスと塩を敷き詰めたり。
その後、テレビのディレクターや、放送作家兼コメディアンのようなことを始めます。
テレビでは、自分の彼女のはヌードや、オランダのユリアナ女王に低俗なことをインタビューするなど、とにかく卑猥で低俗な内容ばかり。
そのため、各所で議論が巻き起こり、当時の文化大臣を怒らせたりしました。
初期の「電波少年」のような感じの立ち位置ですかね?
なぜか教育番組である「セサミストリート」の「アーニー」役でドイツ語吹き替えを担当したりもしています。
日本で言えば北野武を想像してもらうとわかりやすいかも。
国民的な人気があるコメディアンであり、番組の制作も行い、芸術方面の表現活動もする。そんな人です。
で、本日の1品の話です。
「Pindakaasvloer」英語では「Peanut butter platform」日本語だと「ピーナッツバタープラットフォーム」。
床に、ピーナッツバターを塗りたくった作品です。
オランダではすごく有名な美術作品で、ウィキのページまで作られています。
こういう作品、わけが分からないと思います。
さらに、こういう作品を評価する欧米の人たちの気持ちも、よくわからないと思います。
でも、実は、欧米の人たちだって、こういった作品をよく分からないなぁと思っています。
最初にこれを見たオランダのジャーナリストたちは、作品の前に立って困惑し、どうしたらいいのかわからなくてじっと見ていたそうです。
そこへシッパーズが「素晴らしいだろう! 今、全員がピーナッツバターを見ている!」と言いました。
ジャーナリストと、テレビで活躍する人気者が集まって、黙ってピーナッツバターを見ている。
確かに、その光景は面白いかも。
それがきっかけとなり、少しづつ議論が始まります。
なぜピーナッツバターなのか。
なぜ床に塗ったのか。
どうして僕らはこれを見ているのか。
これはアートなのか。
こうやって、いろいろなことが議論される過程で、アーティストの人生にも焦点が当てられ、一貫した活動であれば作品の評価が決まってくるのです。
作品単体の評価ではなく、全体として何をしているのかが、議論されます。
そのため、シッピーズの初期の卑猥なテレビ番組は、公営の美術館に映像作品として収められています。
日本だと、この議論が起こりにくいので、現代美術が広まらないんだろうな。
これは、作品の制作風景。おびただしい量のピーナッツバター。
それはいいとして、野性爆弾のくーちゃん。
あの方は、ぜひ、美術活動もやってほしい。
発想、アウトプット、コンセプト。
すべてが凄まじい。
日本のお笑いも素晴らしいですが(まじ好き)、美術という世界で勝負できるプラットフォームに、ぜひおいでくださいませ!!