くま美術史

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2重のナチュラル【1日1品】

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遠足、行こ!!


本日は最後に宣伝も。

淺井裕介。

おそらくあと数年後には、村上隆奈良美智会田誠らと同じぐらいのインパクトで、淺井裕介の名前が呼ばれる日がくると思います。

そのぐらい作品がいい。

むっちゃいい。

本日の一品は、淺井さんの「胞子と水脈」。

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現在、天王洲のギャラリー「URANO」にて展示中。


淺野さんは日本の美術業界ではとってもめずらしい経歴でデビューしました。

彼のWikipediaを見ると、「東京都出身。神奈川県立上矢部高等学校普通科美術陶芸コースを卒業。卒業後4年間、制作環境を求めて高校に通い続ける。」とあります。

通常、美術の道に進みたい人は美術大学にはいります。

日本の美術大学は、東京芸術大学を頂点としたヒエラルキー構造があると考えられており、有名な美大に入らないと芸術家にはなれないと、多くの人が思っています。

だから、何年もかけて浪人を重ね、芸大に入る人がたくさんいます。

芸大に入れず、そこらへんの美大に入っても芽が出なそうだったら、海外の美術大学に行くのも流行っています。

学歴ロンダリングです。

美術なんて完全実力主義でしかないのに、なぜか学歴をつけようと努力している人がわんさかいるのです。

不思議。


淺野さんは、東京芸大どころか、他の美術大学にも入っていません。

高校卒業後、絵を描く場所を貸してもらうために、出身高校に通い続けたという、変人です。

私の周りにはそんな人いません。


その後、地道に発表を続け、2009年の「VOCA展」で大原美術館賞を受賞。

そのあたりの時期から認知が広がりはじめ、今では国内若手アーティスト屈指の活躍をしています。

昨年あたりから海外での発表も多くなっていっています。すばらすい。

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作風は「2重のナチュラル」。

「なにを描くか考えるよりも、とにかく描いていたい。描くことが好きでしようがない」という、美術的ナチュラルさがひとつ。

あとは、絵を描くときに「土や泥」を使うという、そのまんまのナチュラルさがもうひとつ。

2重のナチュラルさが合わさっています。


土や泥で描いた作品は、油絵の具などに比べてとってももろいです。

雨風に当たればすぐになくなってしまうし、室内でもだんだんと朽ちていくようです。


今の時代、ものを作るというと、長く残すことが前提になっています。

美術なんてその代表で、千年残すことが至上命題みたいになっています。

どんな絵でも、数千年も経てば国宝です。

そういうのとはちょっと離れて、残すことが難しい素材で絵を描いてみる。

淺野さんは「描く喜び」という美術のど真ん中と、「残さない」という美術のアンチテーゼみたいなことを、同時にやっているからおもしろい。

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この淺井さんの作品を見に「びじゅツアー」を行います。

アートギャラリーへの遠足です。

普段は入りにくい現代美術ギャラリーを、みんなで見てみましょうという会です。

よかったらご参加ください。


以下詳細です。

行き先:TERADA Art Complex(天王洲、寺田倉庫内)

日時:2016年10月8日(土) 14:00〜16:00

参加費:無料(ギャラリーは入場料も無料です)

集合時間:14:00

集合場所:品川駅の中央改札を出た「時計」

ご質問などは以下に〜

r.araki@kuma-bijutsu.jp