川の水が流れる部屋【1日1品】
スマートなだけでなくクレイジー。
曾建華 (ツァン・キンファ)は1976年に中国の広東省で生まれ、香港の芸術大学で学んだ後にロンドンの芸術大学院を出ました。
作品の裏側がまぁ、小難しく。
ニーチェが大好きな彼はその言葉からインスピレーションを受けたり、引用しまくったりしています。
現代のアーティストとしてはめずらしく、自分の作品を売ることに熱心ではありません。
にもかかわらず、2015年のベネツィアビエンナーレに出品して以降は、世界中の美術館やコレクターからオファーが相次いでいます。
また、アメリカ政府から「今年の一番重要な文化プロジェクトは、ツァン・キンを援助することだ」と言われるほど、もう、よくわからないカリスマ的な人気を得ています。
それも、この映像を見てもらえば納得。
本日の1品は、ツァン・キンファの「The Infinite Nothing」です。
直訳すると、無限の虚無。
建物の内部に映像を映している作品です。
これ全部でひとつの作品。
確かに、まぁ、買えないわな。
その作り方もクレイジー。
彼はまず、インターネットで文章を拾いまくって来るそうです。
この作品では、古代ギリシャ神話のシーシュポスという神様の話や、日本の神風特攻隊の話、さらに、1775個におよぶ自殺について書かれたエッセイを集めて、自分のパソコンのデスクトップにつくった「nothing」というフォルダーの中に入れます。
それを読んでイメージしたものを映像化したり、テキストをそのまま流したりしているのです。
いや、考えすぎだろうって思うんです。
こんなことばっかりしていて、生きててつらくないか心配です。
だからこそ、この、一歩間違えればおしゃれなだけで終わってしまうような映像が、とんでもない迫力になるんだなって思います。
こんなことできないよね。
素直にかっこいいわ。
最初の、部屋が川になっているのとか、心地よさと、なんだか言いようのない不安感が、癖になりそう。