やりきった感のある顔【1日1品】
目、怖!
张洹(ジャン・ホワン)は、中国のアーティストです。
河南省で生まれ、上海とニューヨークを拠点に活動しています。
中国のアーティスト?? 水墨画とか?って思われる方もいるでしょうが、現代美術の世界マーケットでは中国人の動向が最も注目を集めています。
美術は、古代ギリシャ時代以来、ずーっとヨーロッパ中心で発展し、第2次世界大戦後からアメリカが中心になり、今はアジアが中心になりつつあります。
欧米の有名ギャラリーや、オークション会社、美術の批評雑誌などが、どんどんアジアに進出し、支店や美術館をつくっています。(もちろんまだまだヨーロッパの影響力は絶大ですが)
この場合のアジアとは、インド、シンガポール、香港、そして中国(上海)です。日本は含まれていません。
アラブはアラブですごく重要ですが、とりあえず今回は触れません。
日本には、優秀なアーティストはたくさんいますが、その作品を買う人がほとんどいません。
そのため、日本のアーティストは海外に出て、欧米のギャラリーと契約し、作品を売っています。
「日本の文句を言うなら出て行け! 」と言う人が稀にいるらしいですが、美術の世界では言われる前から出て行っているのです。
だから何? というと、一言「もったいないな」と思うのです。
反面、中国はむちゃくちゃ美術品を買います。
中国人の「爆買い」にたいして、日本人は百貨店や家電量販店の数万円のものを売りますが、欧米は数百万数千万円の美術作品を売っています。
欧米のプレイヤーが中国に流れ込んできた時、中国人のアーティストはしたたかに自分たちを売り込みました。
そろそろ停滞感も見えてきた欧米のギャラリーも、中国人アーティストを新しい風として迎え入れました。
欧米で人気が出る中国人アーティストの特徴は、共産党の一党独裁政権下で、政権を批判するアーティスト。この姿が、とっても斬新に見えるのです。
だって、ヨーロッパのアーティストは政治批判をしても、国から補助金をもらっていたり、活動が妨害されるようなことはないですが、中国人は政権批判をしたらリアルに逮捕されます。
実際、最も過激な共産党政権批判をするアイ・ウェイウェイは実際に投獄されており、ヨーロッパでは絶大な支持を得ています。
特にドイツでは狂信的な人気で、逮捕されそうになると、すぐに亡命して来て! と何度も誘っています。
ジャン・ホアンも負けず劣らず過激で美しいアーティストです。
本日の1品は、ジャン・ホアンが2002年に行ったパフォーマンス「My New York」です。
肉の鎧を身につけ、白い鳩を飛ばしながら、ニューヨークの街を歩きます。
とにかくこれ見て。
ちょっと笑っちゃいますよね。
いや、なんか、もう、爆笑です。
いや、すごい。
すごいわ……
これは、ボディービルダーのような肉の鎧を身につけ、「強さ」と「脆さ」を同時に問いかけているのです。
アメリカと中国の両方を批判しているのです。
この表情。
この表情がなければ、この作品はお笑いで終わるでしょうが、彼の異常さが、すごい作品に仕立てあげています。
まさに顔芸。
補足:ちなみに私は日本も、中国もけっこう好きです。特に日本国が発行するパスポートは、この世界を生きる上でマストなものだと思い、感謝しています。
ただ、それ以上に美術や、人が自由に表現する姿が好きです。また、逆境の中で面白いことやっているアーティストを尊敬しています。
アーティストは全方位に喧嘩を売りながら、なにかひとつのことだけを異常に偏愛する生き物なので、気持ちがいいです。