くま美術史

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機械の中の個人【1日1品】

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男子垂涎。

本日の1品は、イギリスの作家ジェームス・カッパーさん。

見てください。この、猛々しい機械の中に、少年のにおいがしてくる形を!

こんなの小学生の男子に見せたら、よだれ垂らしてよがり狂うこと必然です。


これはカッパー氏がつくった、産業用機械っぽい彫刻作品です。

世界にひとつだけの、むちゃくちゃかっこいい機械です。

もちろん見た目だけでなく、電源を供給すると、ガリガリと木の台を削ってくれます。

それだけです!

でも、楽しい!

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まじめな話をすれば、たぶん作者は「ものを作るって本質的にはどういうことなの? 」って疑問があると思うんです。

今の時代は、ほとんどのものが機械で作られます。

だからこそ「手仕事の価値」みたいなことが言われたりしますが、でも、それって本当にそうなの?

機械に人格は無く、ただただ効率よく動いているだけの無味乾燥なもののように言われますが、本当にそう思う?

機械にだって、個性や、感情や、無駄があるかもしれない。

労働力だけで考えてしまうと、感情なんてないように思えますが、別の面から見てみると機械にもパーソナリティが見えてくるかも。

逆に、人間だって、労働力や効率性だけを見ようとしたら、そこらの機械と大差はなくなります。

大事なのは、機械なのか手なのかではなく、きちんと相手を見つめて理解してあげることだと、カッパーさんは言っている気がする。(妄想)


美術は、見えにくいものを、見える(対象をきちんと確認する)ようにするためのものです。

だから、この作品は、すばらしい美術作品と言えます。


というか、やっぱり形かっこいいな。

しかも、先端のアタッチメントが何種類もあって、交換しながら削れるんだよ。

激シブ。