くま美術史

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普通のおじさん【1日1品】

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私が、すばらしい作品をみたときの反応は「すげー! 鳥肌!」もしくは「口惜しい」のどちらかです。

 

口惜しいんですよ。

あまりにもいいものを見ると、そこに辿り着けていない自分が口惜しい。

こいつのセンスが恨めしい。

なんとなく自分がイメージしていた目標の形が目の前にポーンと出されたことで気が狂いそう。

みたいな感じ。


我が過去、最高に口惜しい思いをさせてくれたのはこの人。

ドイツの彫刻家シュテファン・バルケンホール。

作品はこんなの。「赤いシャツとグレーのズボンの男」

大阪の国立国際美術館に収められているから見てほしいんですが、これ、普通なんです。

木をガシガシ彫って、普通のおじさんをつくっている。

もう、ありえないくらいガシガシと、どこにでもいそうなおじさんをつくる。


まず、木を彫るときって、表面を滑らかにしたくなってしまうものなんですよ。

その方が「完成」って感じがするから。

日本の仏像とかもだいたいそう。

でも、バルケンホールはガシガシして終わり。

展示の会場には、小さな木の破片がちょこちょこ落ちています。


しかも、彫りだすのは「普通のおじさん」。

普通は、「普通のおじさん」を彫りたいなんて思わないと思うんです。。

それよりも、神様的なのとか、裸のきれいな女性とか。

その方が「美術っぽく」見えるから。

そこらへんに歩いているおじさんを彫ろうなんて、普通しない!!

 

それでいて、すごくかっこいい!

みんなが、神様とか、女性を彫っている中、バルケンホールはおじさんを彫る。

だから、「美術品」になっています。


口惜しいわ。こんなん作られたら口惜しいわ。

このバルケンホールは、本当に大好きな彫刻家なので、この【1日1品】でもちょくちょく出そう。

口惜しいけど。