びじゅツアー 12月12日(土)の様子
美術って、小難しくて、偉そうで、鼻持ちならなくて、理解不能だと言われます。そうですね。だいたいその通りだと思います。
でも、私はそんな美術が好きで「いいところもあるんだよ」と伝えたいんですが、難しい。「ここがいい!」と言っても、なかなか伝わらないんです。
それならば、いっそ、みんなで美術のおかしなところをツッコミまくって、笑ってみようということで、お客さま数名と美術館ツアーに行ってきました。
今回、まずは六本木の「ワコウ・ワークス・オブ・アート」でドイツの巨匠ゲルハルト・リヒターの個展を見ました。
事前に行った私のレクチャーの甲斐もなく
「なにこれ?」
「ゴテゴテしてる」
「意味わからない」
などの、ひじょうに素直な意見で会場は盛り下がりました。
この絵は数千万円程度の値段が付くんだけど、いくら出せますか?と聞いても、
「投機的な目的でも30万円が限界」
「いらない」
など、シビアな意見の連続。ここまで素直な意見を言える美術鑑賞会が他にあるでしょうか。
続いて別室に置かれたリヒターの集大成とも言える「グレイ」(ただの灰色の鏡)という作品を前にすると
「あー、これは引越しの時にオカンに捨てられるわ」
「お洒落だからマネしてつくる」
などの、美術の価値を根本から揺るがす言動が出てきます。
この時点でツアーの成功を確信しました。
この後も、「これって買ったら梱包どうなるの?」など、ふだんはまったく考えないような質問が飛び交います。
ギャラリーに漂う「これはお芸術なので疑問は持つな。批判するな。ほめ讃えよ」という空気をぶっ壊すことができました。
続いてツアーはとなりの「森美術館」で日本が誇る村上隆さんの14年ぶりの大規模な個展に移動。
ここでは完全に美術に慣れたみなさまから、さらに正直な意見が。
「わりといい」
「へー、でかい」
「どうやって描くの?」
と、意外にもけっこうな高評価となりました。
村上さんの今までの功績や、背景にあることなどを交えてお話しするとさらに好評。
「タカシは真面目だな」
「すごいいいやつだと思う」
「ちょっとワルぶってるけど、それ以上にいい人っぽさが出てる」
などなど、この人、すごい巨匠だよと言っても、ふだん美術になんて興味ない人たちなので知ったこっちゃありません。
最後の方まで進んでいくと、完全に「スーパーフラット」な目線での意見が続出。
「あー、これはダメだ。完全に社会におもねっている」
「そうだね。さっきの銀色のはすごくよかったのに」
「ね。あれが最高。これは俗物だ。タカシに言いたい」
もう、大爆笑でした。自由すぎるだろう。
今回のテーマである「500羅漢図」にたいしても
「たぶん500より少ないんじゃない?」
「いや、真面目だから数えてるだろう」
「そうだね。タカシに限って少ないことはない。502体ぐらいはいそう」
「いるね。これは502体はいると思う」
と、謎の盛り上がりをみせました。
でも最後には
「本当にタカシのこと好きになった」
「これからも新作を見たい」
などなど。すごくポジティブな意見ばかりが出ました。
私は思うんです。
「美術ってこうだ。こんな深いことを考えてる。すばらしいよね」
こんなこと言っても、感動はうまれません。
素直な気持ちで見たらいいんです。
ひとりの人間が、苦労を重ねて、真剣に頑張ってつくったものを、素直に見たら、何かを感じられます。
それは、美術でも、音楽でも、スポーツでも、ビジネスでも、同じことだと思います。
細かい技術や、小難しいコンセプトなんて理解しなくても、美術を楽しむことはできます。
そうすれば、もっとたくさんの人が美術館に楽しく足を運ぶことができると思います。
あー、楽しかった!
参加していただいた方々。
本当にすばらしく示唆に富んだ意見をありがとうございました!
またやります!!